Last Updated: 2019年10月28日
スペインの映画界はけっこう頑張っていて、面白い作品が沢山あります。
その中から個人的に、初めてスペイン映画で興味を引いたモキュメンタリーの映画「REC」を紹介します。
- 映画「[REC]」スペイン、2007年
- ジャンル:ホラー
- 主演:Manuela Velasco
- 監督:Jaume Balagueró & Paco Plaza
(リンク先は全てIMDB)
冒頭のあらすじ
地元テレビ局のリポーターのアンヘラとカメラマンのパブロの二人は、消防士たちの日常をリポートするため、マドリードの消防署内で取材を行っていた。
明るく応対する消防士達と楽しく取材をしていたが、緊急出動命令がかかり、素早く着替えて消防車に乗る消防士達、アンヘラ達もそれについていく。
今回は火災の消火ではなく、マンション内のトラブルで呼び出されたらしい。
目的のマンションに入っていく一同。そこには警官と数組の居住者が1階のロビーに集まっているが、聞けば問題の部屋は2階ということで警官、消防士と共にアンヘラ達もその部屋に向かう。
警官を先頭に部屋に入ると下着姿の年配の女性が立っていたが、突然警官の首に噛み付き、一部を食いちぎった。
突然の事にパニックになる一同。なんとか引き離して重傷の警官を外に運び出そうと1階に下ろすが、その間に建物全体が外部から封鎖、完全隔離されていた。
異常をきたした女性と、理由を知らされず突然隔離されたマンション。
一体何が起こっているのか?一同は混乱しパニックに陥るが、アンヘラとパブロはリポーターの使命として一部始終を記録することに決めたのだった。
感想&解説
モキュメンタリーとしての見どころ
モキュメンタリー(ドキュメンタリーを模した形式、フェイクドキュメンタリー)として撮影されているお陰で、臨場感が半端ないです。
まず、カメラとカメラマンがその劇中に存在していて、そのカメラ1台だけで全て撮影されているので、全体を俯瞰したり、伏線になるような物の映像を差し込むような(架空のカメラが捉えている様な)視点やカットはありません。
カメラマンであるパブロは基本的に映像に映りませんが、たまに体の一部が写っていて実在することを表していますし、パブロも襲われて噛みつかれそうになります。だからリアルなんですよね。
そしてモキュメンタリーの流れとして定番なんですが、最初は日常から始めてラストに向かって緩急つけながら非日常を描写していくので、その落差により一層恐怖を煽ってくれます。
そしてBGMが無いのもモキュメンタリーとして定番です。音楽で感情を煽る必要は無く、逆にBGMを入れると臨場感がなくなってシラケてしまうんですよね。
基本的に1シーンごとに1カットなので編集している感があまり無く、つまりリアルな時間経過で描かれています。
時々カットが入りますが、そこは「何も起きていない時間、撮影しても意味のない時間」を表現しているので、そういう意味で時間の経過を感じます。
特に最後の約30分は、実際はカットして別に撮っているものの、編集でうまく繋げてカットが無いようにみせているので、ストーリーとしてはリアルタイムで進行するわけです。
しかも展開が早い上に手ブレも激しいので、臨場感がものすごい。
最後に暗視モードに切り替えることによって映像が暗くなって画面中央にしか物が映らないので、より不気味な雰囲気を醸し出してます。
これらが病みつきになりますよねモキュメンタリーって:)。
モキュメンタリーの醍醐味としてもう一つ、カメラの映像データが警察や映像制作会社の手元に渡るまでを描いて「実際の出来事」として完璧に表現しますが、「REC」ではそこが描かれていません。しかし続編「REC2」で解消されています:)
感想&解説(後半ネタバレあり)
内容に目を向けると、ゾンビ物ではあるんですが他の作品とは少し違った展開が楽しめます(ネタバレになる部分は下の方で書いてあります)。
まず舞台がマンション一棟というかなり狭い空間で、割とリアルタイムな時間進行でストーリーが展開します。
そのマンションがマドリードという大都市にあり、街も賑やかで人も多い場所でありながら、隔離することで密閉された狭い空間を作り出している設定も面白い。
凶暴化した人の襲撃に怯えながら、逃げたいのに隔離されて逃げられない状況。すぐそこにいつもの町並みがあり人々が普通に生活しているのに壁一枚で切り離されている絶望。
それでも、リポーターとして全てをカメラに収めたいアンヘラとパブロが一部始終を撮り続けます。
ここからネタバレを含みます。
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ストーリーはゾンビ物として進行しますが、クライマックスで突然、今まで観てきたゾンビ物とは明らかに雰囲気の違う部屋が登場するので、今までの感覚から放り出され、一瞬混乱します。
この「放り出される感」は「2001年宇宙の旅」のラストに近いです。
あの「え?え?」って感じ。
その後カメラを暗視モードにすることで恐怖を煽りますが、さらにゾンビとは明らかに違う、得体の知れない人、、というか異形が映像の中に浮かび上がる。。。!
恐ろしい形相で暗闇の中を徘徊してるんですよ。。。!金槌持って!めっちゃ怖いやないですか!!
この展開はさすがに予想できませんって。。。!
モキュメンタリーも相まって、このラストシーンの予想できない展開にやられました。
そして最後のシーンで分かる通り、実はキリスト教教会系の(かなり力があるらしい)組織が、ポルトガルの少女メデイロスに起こった事件を調査した結果、悪霊が取り憑いている事と、それを科学的に解明し除霊するためのワクチンをこのマンションで密かに開発しようとしていたことが明かされます。
しかし実験は失敗。神父が失踪してから数年経ち、どこかからその悪霊がウイルスとして漏れ出し、マンションの住人に飼われている犬に憑依=感染し、それが人に感染して今回の事件になった、というわけです。
このバックボーンもまた予想外ですよね。宗教の裏側というか、そういった広がりを感じさせます。
そして最後に登場した不気味な異形は、メデイロスの成れの果てだったのです。
神父は何処に行ったのか?なぜメデイロスの存在が住人に知られなかったのかは、REC2にて:)
ゾンビ物だと思っていたら悪霊物だったという予想外の展開。
ゾンビになってしまうウイルスとして悪霊を持ってきたのは、思いつきそうで中々思いつかないですよね。これがRECの面白いところでしょう。
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ネタバレここまで。
「REC」はこの後、REC2,3,4と続きますが、モキュメンタリーとしては2までです。
3はどちらかいうとスピンオフですが、花嫁役の女優さんの怪演が見ものです。あんなに美しい女優さん(Leticia Dolera)なのに。。。w
またアメリカ版としてリメイクされた、「REC」とほぼ同じ内容の「レック/ザ・クアランティン」と、それに続く続編もあります。続編は全く別のストーリーですが、こちらもまぁ面白いです:)
というわけで、モキュメンタリーとしても秀逸でストーリーも一線を画した、スペイン映画としても良く出来ている「REC」の紹介でした。
臨場感はありますが、もちろん現実ではなく映画なので、安心して「恐怖を楽しむ」のもいいと思いますよ:)