Last Updated: 2020年1月26日
今回紹介する映画「パラノーマル・アクティビティ:呪いの印」は、ホラー映画の「パラノーマル・アクティビティ(以降「PA」と略します)」シリーズのスピンオフ作品です。
タイトル:パラノーマル・アクティビティ:呪いの印 (2014)
出演:
Andrew Jacobs
Jorge Diaz(ジェーン・ザ・バージン、MARVELランナウェイズ)
Gabrielle Walsh(ヴァンパイア・ダイアリーズ、フロム・ダスク・ティル・ドーン ザ・シリーズ)
PAは本編が今の所5本あるのですが、その本編の1~3を観ずにこの映画を先に観てしまうと理解できない所がところどころあるので、できればPA1~3を観てから御覧ください。
そしてPA4,5の補足的作品にもなっているので、この2作の理解もより深まると思います。
あらすじでは伏せていますが、解説ではPA1~3のネタバレを含んでいるので、それを踏まえた上でご覧いただければと思います。
目次:|あらすじ|解説|本編とのつながり|時系列とラストシーン
あらすじ
2012年6月、カリフォルニア州オックスナード。ヘクターは最近手に入れたハンディカメラで、友人ジェシーのハイスクール卒業式を撮影していた。
その日以降カメラを使ってジェシーと友人たちの日常を撮り続けるが、大抵はイタズラなど馬鹿なことをカメラに収めていた。
ジェシーとその家族が住むアパートの1階に怪しい女性のアナが住んでいたが、換気口からアナの部屋をカメラで覗こうとやってみたところ、不気味な儀式じみたことをやっているのを見てしまう。
数日後、アナが自室で遺体になっていたのが発見される。ヘクターとジェシー、友達のマリソルはいたずら心で空き家になったアナの部屋に忍び込むが、そこで妙な祭壇やVHSテープを発見。ラベルには「Katie and Kristi 1988」という文字が。さらにノートがあったので持ち帰る。

持ち帰ったノートには「時空の扉を開く方法」「インキュバスを呼ぶ儀式」などが書かれていた。
この頃からジェシーに奇妙な事が起こり始める。
アナの部屋には以前からジェシーの同級生であるオスカーが密かに通っていたが、ジェシーたちの前で謎の言葉を残し自殺する。
オスカーの自殺前の行動で部屋に地下があると知ったジェシー達がその地下を調べると、ジェシーの写真、さらにジェシーの母とアナ、謎の女性の三人が写っている写真を発見する。
ジェシーは奇妙な行動を取るようになり、性格も凶暴になっていく。
ジェシーを助けたいとヘクター達が手がかりを追うなかで、自殺したオスカーが関係していると知り、オスカーの家へ向かう。
迎えたのはオスカーの兄で地元ギャングのボスでもあるアルトゥーロ。彼もオスカーが異常になった事を気にしており、そのオスカーの部屋には新聞の切り抜きなどが壁一面に貼られていた。
その記事には、世界中で長男が失踪したり、何らかの精神異常をきたした事件が発生しており、それには魔女集団の呪いが関わっているらしい事が書かれていた。
そしてアルトゥーロの弟オスカーも実は養子で、血筋としては長男であるという事実と、ジェシーも長男であり、アナの部屋の地下で写真を発見した事もあり、魔女の呪いにかけられている可能性があると確信する。
新聞の切り抜きの中に「アリ・レイ」と書かれた名前と電話番号が書かれたメモを発見。ヘクターはそれを密かに手にし、家を出る。

メモにあった電話番号にかけると、アリ・レイは直接会ってくれるという。
アリもこの件について独自に調査していた。そして「ミッドワイブス(魔女の助産師)の印」と、「その儀式を受けた長男が18歳(6+6+6)になった時に悪魔が憑依する」ことを教えてもらう。
そうこうしているうちにジェシーはますます凶暴化し、祖母イルマを殺して失踪する。
マリソルとヘクターはアリから最後の儀式の情報を貰いその場に向かおうとすると、突然ジェシーが現れ二人に襲いかかるが、なんとか頭を殴って気絶させる。ジェシーを車に乗せ病院に連れて行く途中、車が横から衝突し、その隙にジェシーが誘拐されてしまう。
残されたヘクター達はアルトゥーロに助けを求め、彼とその部下一人を連れ、アリから教えてもらった片田舎の家へ。
その家に忍び込むが隠れていた女性達に襲われ、ヘクターの仲間は一人また一人と殺されていく。一人生き残ったヘクターはジェシーに襲われ家の中を逃げ回り二階の一室に閉じこもるが、そこで奇妙な文字で囲われた不気味なドアを発見。恐る恐るドアを開けると、そこは今までとは少し違う雰囲気。更に奥に進むと階段が見え、その階段を降りてくる女性がいた。
その女性に助けを求めると突然「ミカ!ミカ!」と叫びだす。
女性の悲鳴を聞いたのか2階から男性が駆けつけるが、女性はその男性をナイフでめった刺しにする。
それに驚いたヘクターが逃げようとした瞬間、化け物の顔になったジェシーに命を絶たれる。
放り出されたカメラを謎の女性が覗き込み、カメラのスイッチを切る。
目次:|あらすじ|解説|本編とのつながり|時系列とラストシーン
解説
まずPAシリーズと同様モキュメンタリー形式ではあるんですが、PAのお約束とも言える「監視カメラなどの定点観測」がこの作品では行われていないのが特徴的でしょうか。常にハンディカメラで撮影しているというのがPA本編とは違う作りになっています。
そしてPA1~5は比較的裕福な家が舞台でしたが、今回は中流層かもっと下層の世帯が舞台になっています。
これには理由があります。PAシリーズのネタバレになりますが、PA3で、ケイティとクリスティの祖母ロイスが実は魔女で、彼女(または彼女のグループ)は裕福な生活を悪魔に求め、その代償として家系の最初の男児を差し出すという契約をしていました。
ロイスの娘ジュリーはケイティとクリスティを生みましたが、男児はできませんでした。
しかしクリスティが大人になり結婚し、初めての男の子ハンターを生んだことで一連の事件が始まります。
そしてジュリーもケイティもクリスティも比較的広い家に住み、経済面でも余裕のある男性と生活を共にしています。これは悪魔との契約が履行されていると考えていいんじゃないかと。
「呪いの印」ではこれとは別のラインで、アナは裕福な生活に興味はなかったのか、アパートの一室で暮らしていました。
また目的も自己の欲求を満たすのとは違い、インキュバスをこの世に送り出す儀式を執り行っていました。
今作の登場人物がラテン系というのがまた良いですね。メキシコのキリスト教や「死者の日」のイベントは独特で怪しい雰囲気満載ですよね:)
(「ブレイキング・バッド」の双子の殺し屋が祈るシーンの祭壇もそうですし、映画「フロム・ダスク・ティル・ドーン」にも似た雰囲気があります)

PAシリーズと「呪いの印」の共通点として、アナの部屋ではケイティとクリスティのVHSビデオと家族写真、地下ではジェシーの母とアナ、そしてケイティとクリスティの祖母ロイスが一緒に写っている写真も発見されており、PA5作と「呪いの印」が一つの世界であることを確認できます。
更にアルトゥーロとオスカーが集めた新聞の切り抜きから、世界中で魔女が暗躍していることも示唆されています。
つまりロイスの魔女集団は数人のローカル集団ではなく、世界規模で暗躍している巨大な組織で、色々な儀式を行っている、という実態が描かれているんですね。
(このことがPA4のラストの理解に繋がると思います)
というわけでこの作品で語られているのは、「魔女集団の存在と行っている儀式、その規模」というPA全体のバックボーンです。
そして表の世界では、警察が押さえた「PA1~3」の証拠映像と、アリ・レイやアルトゥーロなどの独自調査によって、その魔女集団の存在が少しずつ暴かれてきているという状況も描いていますね。
目次:|あらすじ|解説|本編とのつながり|時系列とラストシーン
本編とのつながり
本編との共通点をもう少し掘り下げます。
アナの部屋と地下で見つけた写真
注目すべき写真は二枚あって、一枚はアナとジェシーの母、そしてケイティとクリスティの祖母であるロイスが写っている写真。

そしてもう一枚は、ジェシー達が持ち出したノートの中にケイティとクリスティ、そして母親のジュリーの家族写真があります。

アリ・レイ
アリ・レイはPA2の殺された家族の中で唯一生き残った娘です(クリスティは義母)。彼女は家族の死の真相、ハンターの行方を追い、その結果魔女集団にたどり着いたのでしょう。

最後の儀式の家
この家はPA3にてロイスが住んでいた家です。そしてジェシーの儀式の場所でもあり、さらにケイティとクリスティもここで何らかの儀式をしています。そしてここには「ドア」があります。
つまり魔女の拠点の一つなのでしょう。
ラストシーンの家
この家はミカの家で、彼女であるケイティが同棲しています。そしてPA1の舞台でもあります。
目次:|あらすじ|解説|本編とのつながり|時系列とラストシーン
時系列とラストシーン
「呪いの印」は2012年の出来事です。これを踏まえて。。。
- アリ・レイは6年前、2006年に家族を亡くし、ハンターも連れ去られたことから調査を開始(PA2)。
- ロイスの家(PA3)は2012年では(ロイスが亡くなった事もあって)空き家になっていますが、馬屋の中に女性が監禁されていたりヘクター達が魔女に襲われたりしているので、儀式などにはまだ使われており、魔女たちによって管理されている模様。
- ラストシーンの家はミカの家で、叫んだ女性はケイティ、そして駆けつけた男性はミカです。そしてヘクターが見た光景はケイティがミカを殺す瞬間だったのです。
その日付は2006年10月8日です(PA1)。
あれ?
「呪いの印」は2012年なのに、ケイティがミカを殺したのは2006年?
そうなんです。ここが実は肝で、ヘクターが通ったドアは「時空の扉」で、そのドアを通って時空を超えて過去に戻り、行き着いたのは2006年10月8日のミカの家でした。
ちなみにロイスの家(ムーアパーク)とミカの家(サンディエゴ)はGoogleマップによると約270kmほど離れています。
つまり、魔女達は既に時空を超える術を手にしていたのです。。。!
というわけでPA1を観ていないと、このシーンが「PA1のラストに繋がった」事はもちろん、「魔女たちが時空の扉を作り出していた」という事も理解できないんですよね。
ラストをこのシーンに繋げたことで、PA1のラストでケイティが悲鳴をあげた理由付けになっていて、さらにPA5に繋がる伏線にもなっているんですね。
ついでに、アナの部屋の地下で二人の姉妹が一瞬出てきますが、これは幼い頃のケイティとクリスティです。
2012年に1988年頃のケイティとクリスティが居たということは、理由はわからないけど彼女たちは色々な時間を垣間見ているんじゃないでしょうか。
というわけでここにも時空の扉があるんじゃないかと思います。
以上、「パラノーマル・アクティビティ:呪いの印」を解説してみました。
ストーリー前半は馬鹿ばっかりやっている印象で退屈かもしれませんが、全体としては本編の裏を見ることでバックボーンが意外と大きい事が分かり、今後魔女たちが何を仕掛けてくるのか期待させる作品だと思いました。
5で完結したと思ったらまた続編の噂があるみたいですね。楽しみです:)