The Outfoxies 回顧録

Last Updated:  2025年12月23日

本業のほうで大きな動きがあったので、こちらでも何か書こうと思います。

一部界隈で賑わいを見せている昔のビデオゲームを復刻するプロジェクト、アーケードアーカイブス。
12月18日発売、499本目のタイトルは、自分も携わった「The Outfoxies」でした。
30年目にしてのコンシューマ化、やっとか!っていう気持ちと、皆さんの反応が嬉しくてちょっと泣きそうになりました。

特番「アーケードアーカイバー」のほうでは開発者の皆さんが集まって当時を振り返ります。自分はコメントを送って紹介されています。

というわけで、開発全体はこちらを見ていただくとして、サウンドに関して少々マニアックなところまで突っ込んで書いていこうと思います。

。。。とはいえ、さすがに30年前の出来事なので、細かい所は忘れています。なので断片的な部分もありますことご承知おきください。
また、動画でコメントした部分もかぶっています。

経緯と参考にした曲

入社する前を含めて、アウトフォクシーズを担当する前に主に聴いていたジャズはBill Evansあたりのモダンジャズ(いわば小洒落たジャズ)ばかり。入社後はジャンルを広げる目的で色々聴いていた。

ジャズの専門誌「スウィング・ジャーナル」が毎年最優秀のアルバムをいくつか選定するが、1992年にシルバーディスクに選定されたのがRandy Westonの「アフリカ(原題:The Spirits Of Our Ancestors )」。
そこでRandy Westonの音楽と出会う。

それがその後担当することになる本件、The OutfoxiesのBGM制作の参考になった作品である。

このアルバムの中の「African Cookbook」ではウッドベースが和音で演奏している所(13分58秒〜)があり、それがMr.アクメのテーマのベースのインスピレーションになっていて、さらに曲の雰囲気もこのアルバムから来ているところが多い。

その他は「The Soulciety Funky Family(Jazz Funkのコンピレーションアルバム)」と、それに収録されていたジャズ・ファンクのバンド”M’ Blu Et Moi”の曲と、彼らのアルバム「Precious Spirit」などを参考にしている。
探してみるもんだ、YouTubeに1曲あった。。。!

P-FunkというかBill Laswell関連作品も参考になっている。オルガンはBernie Worrellの影響がある。。。はず。

(当時サウンド内ではテクノブームが起こっていたが)多分こういう方向の曲を聴いているのを知っていたのか、当時の上司である川田宏行さんから仕事を振り分けていただいた。

BGM

曲ごとに覚えている事は以下の通りだが、記憶が無いものも多い。

The Outfoxies

多分サンプル(後のサーカス面)の次に作った曲だったと思う。とにかくカッコよくという感じで。
最後が繰り返しになるが、自分のポリシーである「繰り返す際は1箇所でいいからどこかを替える」を実践している。

Skyscraper

メインテーマの後に作った曲だったと思う。

Showtime

最初にサンプルとして作った曲。基本的なブルースコードで作られている。これがOKをもらったのでこの方向で作ることに。
その後お蔵入りになるが、作曲に行き詰まった時に「この曲が残ってるからこれを使おう」ということでサーカス面に採用される。
ただ若干短く、今になって思えばあと1ループ作っても良かったかな、とちょっと心残り。

City of Blue

スパイ物のドラマはワイルドな曲ばかりではなく、ちょっとヨーロピアンでお洒落な雰囲気の曲もけっこうあるし、舞台が水族館ということもあってここなら似合いそうだなということでその方向で作った。
あとメインテーマでストリングスを使っているが、他の曲で使ってないのが勿体ないからここで思う存分使った、という記憶がある。

曲のタイトルを考えた時に、英語ができる企画の梅田くんに見てもらい「言葉としておかしい」と言われたが、「〜of Blue」という響きが気に入ってたのでそのまま採用。

ちなみにこの”Blue”には水の色の意味と「こんな優雅な場所なのに何で殺し合わなきゃならなんだよ、まったく…」という憂鬱の意味も含んでいる。

Hell train

汽車がステージということで、ジャズの名曲「A列車でいこう」を捻ったタイトル(曲自体は似てない)。
ただこの頃ネタ切れで、飛行機面の曲と楽器や構成が結構似通ってるのが悔やまれる。似せるつもりはなかったんだが。。。

Death Flight

その飛行機面、たしかこちらの方を先に作った。

Jungle Factory

工場面。工場がジャングルみたいに見えたのでこのタイトルにしたが、ちょっとこれも意味がおかしい。。
またジャングルってことでドラムを多めに使っている。

Dangerous Cruise

船面。いわゆるスウィングがベース。6/8拍子で他とは差別化を図ってみた。
ただここは双子のステージなので、後になってタイトルは「Funny Funny Cruise」のほうが似合ってるなぁと思っている。

Mr.Acme邸

Mr.アクメのテーマを展開させた曲。階を上がるごとに曲が展開されるが、1Fはすぐ通り抜けるのが正解なのに対して曲が長すぎるので、ゲーム中に全部を聴けた人はいないんじゃないかな。。逆に2Fでは手こずる人が多い上に曲が短いので、そこを調整しきれなかったのも後悔。

Counterblow

Mr.アクメとの対決ステージの曲で、メインテーマのアレンジ。ネットを見てみると気に入って頂いている方が多いようで、私も嬉しく思っています。ありがとう。

「今作れ(打ち込み直せ)」と言われたら出来るかな。。一部コード進行を見つけられなくて、そこを何度もリトライした記憶がある。そしてどういったコード進行だったか忘れている。。

Enjoy Life

メインテーマのピアノバージョン。各キャラクターのその後が描かれているので、カッコよく締めるより少し明るめのほうがいいかな、あとピアノソロで終わらせるゲームもあまり無いし、ということで思い切ってやってみた。
(社員の一人から個人的に)替えてほしいとも言われたが無視したw。

エンディングを実際に見てみると、キャラクターは安定した生活を手に入れたがどこか物悲しくなって終わってる様に見える。
こういう雰囲気を出したかったわけじゃないけど、意外性があって良い結果になったかな、と。


メインテーマのアレンジは他にもあって、キャラクターセレクト、ゲームクリア、乱入がそう。

曲をこうやってアレンジしてあちこちで使うのは作品の雰囲気がまとまりやすくなるので、映画音楽でもよく使われる手段である。

ネームエントリー(だったかな)

名曲”Take five”から5拍子を参考にして作った。曲調は全く似ていない。

イースターエッグ(隠し要素)

すっかり忘れていたが、設定画面のサウンドテストにイースターエッグを仕込んでいるが、残念ながらアーケードアーカイブスではそこまで再現されていないらしい。

効果音

ゲーム中のギミックが多いので、必然的に効果音の種類も多くなる。揃えるのにいつもより苦労した。

NB-2の音源チップおよびプログラム(サウンドではシステム4と呼んでいた)は、サウンド側がゲームの状況を把握できるので、「この状態になったら音を変更しろ」のような命令をサウンドの方で仕込める様になっている。
(それまではプログラマさんに「こういった処理してください」とお願いするしかなかった)
効果音を作るよりもこういったプログラム要素(っても大抵は1文入れるだけ)を仕込むこと、それをどこで使えるかのアイディアを考えるほうが面白かった記憶がある。

効果音でいえば、飛行機面で飛行機が上向き/下向きになるとき、プロペラ音が高く/低くなるが、そういう場面で使っている。
曲でいえばアクメ邸BGMの「今どのフロアにいるか」でBGMが変わる様になっている。もちろん2Fから1Fへ降りれば1Fの曲になる。誰もそんなことやってないかもしれないけど。。
。。。もしかしたら1Fの曲を全部聴くと時間切れになるかもしれない。。。今気づいた。

あと覚えているのは、ロケットランチャーの音が1Pと2Pで若干違う様にしている。

ボイス

声を担当くださった皆さんは全員外国人で、一人二役など色々演技していただいた。

・微妙な仕様変更はよくある話だが一応書いておくと、システムボイスで最初はアイテムを取った時に「Got a (アイテム名)」と言うようにしていたが、長すぎるってことでアイテム名だけに変更。
(もしかしたらキャラクター名も入ってたかも。「John Smith got a Gun」みたいな)

アジト(テレビ画面が6つ並んでいるシーン)でのMr.アクメのセリフにも上記プログラムが使われていて、次のターゲット、報酬金額、彼、彼女、彼らを指す単語もそのプログラムで変わるようになっている。

・汽車面の石炭だけ言葉がないのは、音声リストから漏れたか、収録した後にその仕様が追加されたか、のどちらか。

・Mr.アクメの声は女性が担当しており、それを男性の声になるように変調している。

・そしてあの「Well come, I am Acme’s wife~」は当時リアルタイムでピッチと長さを同時に変える技術がなかったので、少しずつピッチを替えて長さを調整して、を繰り返して完成させた。

・声優を担当してくださった方々に一番申し訳ないのは、スタッフロールにおいて”Voice Actor”としてではなく、”Special Thanks”になってしまっていること。
本当にすみません。

CD

サウンドトラックのアーティスト名「NJQ」は、MJQ(モダン・ジャズ・カルテットまたはマンハッタン・ジャズ・クインテット)から来ている。

盤面についてはカラー画像を印刷できる「ピクチャーCD」も選べたが、そういうのは似合わないというか、やるならレコードのような盤面にしようかとも思ったが、製造販売元であるビクターの初期に制作されたCDの盤面のほうが趣があると思って、そのデザインにした。
しかし、そうお願いしたら「それを図面に起こしてください」と言われて作った記憶がある。。。

メインテーマを楽譜に起こしライナーノーツに載せてもらった。これもネットにあるので興味のある方は探してみてほしい。


コメントでも紹介されましたが、この仕事に携われた事を誇りに思っています。
こんな企画を立ち上げてくれた梅田くんには改めて感謝します。

また、コンシューマで世に送り出してくれたハムスターの皆さん、ありがとうございました。心残りの1つが解消されました。感謝します。

お買い上げいただいた方、ありがとうございます。初めての方も懐かしい思い出のある方も思う存分お楽しみ下さい。

また興味を持った方、一人で遊べば20〜30分程度でクリアできますし、パーティで対戦するのも盛り上がるゲームになっているので、気軽に楽しんでみてください。😉

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